THE FLAMING LIPS

フレーミング・リップスは83年、オクラホマにて結成。84年に5曲入りEPを発表しており、オリジナルメンバーはウェイン・コイン(Vo,G)、マイケル・アイヴァンス(B)、リチャード・イングリッシュ(Ds)。ソニック・ユースと並び、その音色や奏法には非常に独創的なものを感じさせるUS実験的サイケ・ポップの帝王。全作品オススメです。

HEAR IT IS

1.With You
2.Unplugged
3.Trains, Brains & Rain
4.Jesus Shootin' Heroin
5.Just Like Before
6.She Is Death
7.Charlie Manson Blues
8.Man From Pakistan
9.Godzilla Flick
10.Staring At Sound / With You - (reprise)
11.Summertime Blues

86年発表。EPフォーマットで発売されたが実質の1stとして考えてよいだろう。ノイズ・ギターを基調とした作品でありA「Unplugged」は立てノリパンクのようだ。ギターリフを中心に構成されている楽曲が多い中、H「Godzilla Flick」ではきっちりとバラードも聴かせてくれる辺りに現在にも通ずる普遍性を感じる。メロディアスな楽曲も既に開花。

OH MY GAWD !!!... THE FLAMING LIPS

1.Everything's Explodin'
2.One Million Billionth Of A Millisecond On A Sunday Morning
3.Maximum Dream For Evil Knievel
4.Can't Exist
5.Ode To C.C. (Part I)
6.The Ceiling Is Bendin'
7.Prescription: Love
8.Thanks To You
9.Can't Stop The Spring
10.Ode To C.C. (Part II)
11.Love Yer Brain

87年発表。前作のダイナミズムは失われておらず所々に細かく味付けされたアレンジが光る好盤だ。ウェインのセンスは前作に増して更なる磨きを架けて成長しており、1stの「With You」でも披露されたような後のアルバムで更に開花するフォークとノイズ・ギターの対比が見事に確立された。ギターの音が個性的でいろいろな音を出しており聴いてて楽しいです。

TELEPATHIC SURGERY

1.Drug Machine In Heaven
2.Right Now
3.Michael, Time To Wake Up
4.Chrome Plated Suicide
5.Harikrishna Stomp Wagon
6.Miracle On 42nd Street
7.Fryin' Up - (bonus track)
8.Hells Angel's Cracker Factory - (bonus track)
9.U.F.O. Story
10.Redneck School Of Technology
11.Shaved Gorilla
12.Spontaneous Combustion Of John
13.Last Drop Of Morning Dew
14.Beg And Achin'

88年発表。ザクザクとギターが切り込む@「Drug Machine In Heaven」からカッコ良い。とにかくこのアルバムはギターが素晴らしい。ソニック・ユースの「Daydream Nation」と共に80年代ギター・ロックの決定盤としても良いのではないかと思うのですが。楽曲もキャッチーで粒揃いとなってます。F「Fryin' Up」とG「Hells Angel's Cracker Factory」はLPに収録されてない。Gは23分を超えるインストでギターがフリーキーな音を出したりしてて実験的作りを試みた大作。トリオ編成ながら音の広がりは着実な進化を遂げている事を窺える傑作。

IN A PRIEST DRIVEN AMBULANCE

1.Shine On Sweet Jesus (Jesus Song No. 5)
2.Unconciously Screamin'
3.Rainin' Babies
4.Take Meta Mars
5.Five Stop Mother Superior Rain
6.Stand In Line
7.God Walks Among Us Now (Jesus Song No. 6)
8.There You Are (Jesus Song No. 7)
9.Mountain Side
10.What A Wonderful World

Bonus Tracks
11.Lucifer Rising
12.Let Me Be It

90年発表。気だるそうにも、おもいっきり歌い上げるウェインのボーカル、不協和音を鳴らすギターの@「Shine On Sweet Jesus」で決まりでしょう。とにかくこのバンドの出すギターは最高。A「Unconciously Screamin'」のダイナミックな音使いときたら当時のUSではソニック・ユースとダイナソーJrぐらしか出来ないと思います。B「Rainin' Babies」のバラードナンバーを聴いてもノイジーギターが木霊し非常に力強さを感じる。D「Five Stop Mother Superior Rain」、E「Stand In Line」でアコースティックな感じが増したかなと思いきやF「God Walks Among Us Now」でファズ・ボーカルに爆音ギター炸裂とかましてくれます。G「There You Are」では再びアコースティックに落ち着きH「Mountain Side」のイントロでまたガツンと来る。ボーナストラック扱い(?)として収録されているJ「Lucifer Rising」も爆音を炸裂させてくれてカッコ良い。傑作。

HIT TO DEATH IN THE FUTURE HEAD

1.Talkin' Bout The Smiling Deathporn Immortality Blues (Everyone Wants To
Live Forever)
2.Hit Me Like You Did The First Time
3.The Sun
4.Felt Good To Burn
5.Gingerale Afternoon (The Astrology Of A Saturday)
6.Halloween On The Barbary Coast
7.The Magician Vs. The Headache
8.You Have To Be Joking (Autopsy Of The Devil's Brain)
9.Frogs
10.Hold Your Head
11.Untitled

92年発表、5th。ギターに現マーキュリー・レヴのジョナサン・ドナヒューが参加。ギターポップな様相を見せる@「Talkin' Bout The Smiling Deathporn Immortality Blues」から最高です。勿論ギターの鳴らし方は一筋罠ではいきませんが。A「Hit Me Like You Did The First Time」のイントロとかも普通じゃないんですがポップな仕上がり。全体的に楽曲の良さが非常に増した気がする。ひねくれたコーラスも完成されてきており、しっとりと聴かせるアコースティックナンバーのG「You Have To Be Joking」も良し。ねじれうねうねギターのH「Frogs」も最高の傑作だ。Jはノイズがスピーカーの左右を30分に渡って延々と揺さぶる。

TRANSMISSIONS FROM THE SATELLITE HEART

1.Turn It On
2.Pilot Can At The Queer Of God
3.Oh My Pregnant Head (Labia In The Sunlight)
4.She Don't Use Jelly
5.Chewin' The Apple Of Your Eye
6.Superhumans
7.Be My Head
8.Moth In The Incubator
9.*******
10.When Yer Twenty-Two
11.Slow Nerve Action

93年発表。ドラムにスティーヴン・ドローズを迎えて作成された出世作、6th。音は今まで以上にポップで親しみやすいのだがサイケで不安定な音像は貫かれている。この不協和的なところがバンドの個性を高めており、そこいらのバンドとは一味違う事を再認識させられた。@「Turn It On」の軽快なアコースティック・ギター・サウンドとザクザク切り込むエレキ・ギター。美しいコーラスも聴かせバンド・サウンドの成長を感じさせる。素晴らしいオープニングナンバーです。A「Pilot Can At The Queer Of God」もねじれが利いててパンチがある。ハーモニーは美しくも遠くで爆音ギターが鳴ってたり不協和音鳴らしまくってて、一見ポップなんだけどやはり只者ではない。印象的なひねくれイントロと美しきポップサウンドが同居したCの「She Don't Use Jelly」がヒット。H「*******」の珍しく正統派な引き騙りはシビレました。これも傑作。

CLOUDS TASTE METALLIC

1.The Abandoned Hospital Ship
2.Psychiatric Explorations Of The Fetus With Needles
3.Placebo Headwound
4.This Here Giraffe
5.Brainville
6.Guy Who Got A Headache And Accidentally Saves The World
7.When You Smile
8.Kim's Watermelon Gun
9.They Punctured My Yolk
10.Lightning Strikes The Postman
11.Christmas At The Zoo
12.Evil Will Prevail
13.Bad Days - (aurally excited version)

95年発表7th。メランコリックでサイケな所は相変わらず普遍ですが、メローディーラインがさらに豊かに。@「The Abandoned Hospital Ship」の美しきイントロから泣きそうに入り込むギター。しかしもう一本のギターは不協和音を奏でる彼らの独創美を見事に構築。A「Psychiatric Explorations Of The Fetus With Needles」は非常にポップで親しみ易い。大きなベース音が良いです。ギターも鳴らしまくり。音色豊かにメリハリがついたB「Placebo Headwound」の出来も白眉。アコースティックナンバーのD「Brainville」や厚いコーラスを聴かせるE「Guy Who Got A Headache And Accidentally Saves The World」も美しいのですがギターの鳴らし方やそのアレンジといった楽曲の構築の仕方が普通じゃなくても素敵に聴こえる。今にも崩れそうなウェインのボーカルはこの作品で完全に確立。メロディーを如何に大切にしているバンドであるかを再認識させられる名盤です。

ZAIREEKA

Disc 1〜Disc 4
1.Okay I'll Admit That I Really Don't Understand
2.Riding To Work In The Year 2025 (Your Invisible Now)
3.Thirty-Five Thousand Feet Of Despair
4.A Machine In India
5.The Train Runs Over The Camel But Is Derailed By The Gnat
6.How Will We Know? (Futuristic Crashendoes)
7.March Of The Rotten Vegetables
8.Big Ol' Bug Is The New Baby Now

97年発表。4枚組の8th。ギターのロナルドが脱退したためデビュー当時のトリオ編成に落ち着いたフレーミング・リップスが試みたこの作品は音源を分けて収録した4枚のCDを同時再生させ音響空間の広がりを試みた実験的作品となった。スーパー・ファーリー・アニマルズが2001年に発表した「Rings Around The World」でDVDを使用した5.1chサウンドを実現させ圧倒的空間を作ってくれたことは記憶に新しいが既に4年前、フレイミング・リップスはその実験的音空間を試みていたのだ。とりあえずDisc 1を聴いてみる。「Track No1 This Is CD No1」のアナウンスが聴こえる。ドラムとベース音が強調されてるのかな。ウェインのヴォーカルも少し聴ける。でも何となくしか分からないのが実感。Disc1〜4をそれぞれ聴いてみると個々のCDが別の音として機能しているのが良く分かる。どうやらDisc 1とDisc 3が基調となる音を出しておりDisc 2とDIsc 4がその補助をするといった感じか。何だか分からないが全部を一緒に聴いたら凄い事になりそうだと、どうしても全部聴いてみたくて反則技で対処した結果が下記。あくまで合成しただけでやはり4台の装置、8つのスピーカーを使って再生させたいのが本音ですが・・・。ちなみにシングルのB面で一部の合成バージョン等が聴ける。

封入解説書より

この「ZAIREEKA」を楽しむにはCDプレーヤー4台を必要とする。当然の如く普通の人は持っていないわけで楽しむにはテープやMD録音等で対処するしかないが結局は再生装置が4台必要だ。1枚、1枚で聴いても断片的ながらそれなりには楽しめるがやはりこの前代未聞の音空間を体験したいのがファンとしての性。そこで用いたのがCD編集ソフト。僕のソフトにはミキシング機能で2つの音源を合成できる(最近某社が複製不能CDを発売したようだが編集して音楽を楽しんでいる人はどうするんだ!。例えば曲間が無いアルバムから一曲を抽出して聴いてもイントロ、アウトロが中途半端になってしまうため僕はイントロをフェイドイン、アウトロをフェイドアウトの形で編集して楽しんでいる。無音状態が続く部分なんかもカットしたりと。これからはそんな事が出来なくなってしまうのだろうか?明らかにこの行為は消費者に対する愚行だ。許されるべきではない。僕にとって必要の無い音だけでこの行為が収まることを願う)。前置きが長くなりましたがDisc 1とDisc 2をそれぞれ一曲ずつ合成。さらにその合成された音源をDisc 3と合成。さらにDisc 4を・・・と手間のかかる作業を一曲ずつ行った末「ZAIREEKA Disc1〜4」を完成させました。波形データを見てもそれぞれのDisc毎に違っており面白かったです。とりあえず完成したCDを試聴。一曲目からかなり凄いです。「Track No1 This Is CD No1 No2 No3 and No4・・・」と入っていくイントロから感動。おまけにこの空間的な音!。合成CDながら上手い具合に音が分離されててそれなりの出来に仕上がりました。ドラム、ベースと入っていく短い@「Okay I'll Admit That I Really Don't Understand」は上手く分離できており良いです。壮大なA「Riding To Work In The Year 2025 (Your Invisible Now)」はやや音圧が強すぎて厳しい。分離は良い具合。広い空間で聴いたら凄いだろうな〜。壮大なスペース風バラードはフルボリュームで聴くには辛いがなかなかの出来。音がぐるぐる回るんでこれも同時再生で臨場感を味わいたい。アコースティック・ソングから展開する10分を越える大曲C「A Machine In India」はアコギの中をストリングスや電子音が舞う。徐々に壮大になっていくまるでオーケストラ。コーラスが分厚いD「The Train Runs Over The Camel But Is Derailed By The Gnat」は上手く表現できてる。E「How Will We Know? (Futuristic Crashendoes)」の音響処理はかなり凄いです。周波数を変えて録音されたものらしくDisc 2をメインにあとのDiscはキンキン言ってます。合成CDでは多少難あり。ヘッドフォンで聴くにはちと辛い。同時再生で聴いてみたい。F「March Of The Rotten Vegetables」のドラムとノイズは強烈。最も実験的作品。ドラムは度迫力です。これも大空間で聴いてみたい。語りから入るG「Big Ol' Bug Is The New Baby Now」の大合唱は感動モノ。合成CDで十分楽しめる。さらにこのCDをDVDの5.1chで再生した所さらに音が空間的になりましたが分離しすぎており音がモヤモヤっとなってしまった。聴くなら普通のステレオ・スピーカーの方が良いかもしれないが曲によりけり。ABFなんかは5.1chの方が聴きやすいかもしれない。しかしこのCDを楽しめた人は何人いるんだろうか?日本盤(彼らの初期作も日本盤が出ていないことは非常に嘆かわしい)は発売されてないどころか限定5000枚(の様子)。内容が悪かったら話は別だが、はっきり言って楽曲の出来が良い。今までにない空間構築が味わえるだけでなく美しく壊れそうなポップナンバーもちゃんと揃っている。この出来の良さから考えるとあまりに惜しすぎる。おまけにこの感動を伝えたくても回りに理解してくれる人も無し。誰かこの音空間を体験してみませんか?
さて、この「ZAIREEKA」だが同時再生イベントが何回か行われている。有名なイベントでは1998年にロンドンで行われたメンバー主催のイベントBoom Box Experiment。40ものデッキを同時に押しましょうというとんでもないイベントで何とボタン押し係にはケヴィン・シールズEAR、スペクトラムのソニック・ブーム、ステレオラブのティム・ゲイン他、何とワイルドハーツのジンジャーまでもが参加したという僕としては発狂モノのイベントです。「ZAIREEKA」収録以外の楽曲も多数披露されたらしく行った方は至福の音空間を味わえた事でしょう。まるで40×2のスピーカーからなるオーケストラだ。

THE SOFT BULLETIN

1.Race For The Prize - (remix)
2.A Spoonful Weighs A Ton
3.The Spark That Bled
4.The Spiderbite Song
5.Buggin' - (remix)
6.What Is The Light?
7.The Observer
8.Waitin' For A Superman
9.Suddenly Everything Has Changed
10.The Gash
11.Feeling Yourself Disintegrate
12.Sleeping On The Roof
13.Race For The Prize
14.Waitin' For A Superman - (remix)

99年発表の大傑作9th。個人的にはこの年のベストアルバムの一つでもあります。初期からは考えられないほどギター音が無くなり、荘厳なシンセの音が美しいメロディーを包み込む。@「Race For The Prize」から夢心地の音響空間に浸れます。これを聴いて彼らのファンになってしまった方も多い事でしょう。泣きそうな位良いです。今までのリップスも良いですがこちらも良しと、フレーミング・リップスの底力を見事に描き出しており紛れもなく彼らの最高傑作(っていうか90年代の作品は全部最高傑作と呼んでも良い程素晴らしいと思うんですが…)。

YOSHIMI BATTLES THE PINK ROBOTS

1.Fight Test
2.One More Robot / Sympathy 3000-21
3.Yoshimi Battles The Pink Robots Pt.1
4.Yoshimi Battles The Pink Robots Pt.2
5.In The Morning Of The Magicians
6.Ego Tripping At The Gates Of Hell
7.Are You A Hypnotist??
8.It's Summertime (Throbbing Orange Pallbearers)
9.Do You Realize??
10.All We Have Is Now
11.Approaching Pavonis Mons By Balloon (Utopia Planitia)
12.Yoshimi Battles The Pink Eobots Pt.1 (JapaneseVersion)

2002年発表。独特のフィルターを通したウェインのか細い声にテクノロジーが対峙したとき生み出される浮遊感。前作以上に電子音を強めた本作は「THE SOFT BULLETIN」の路線を継承。従来と演奏形態を変え、以前のギターバンドとしての面影を失いつつもウェインの研ぎ澄まされたビジョンが深化。適度に実験的で適度に分かり易い微妙さのあるフレーミング・リップスの持ち味は当然の如く、楽曲の質にも衰えなし。映像でも何らかの光りでも良い。メディテーションして何か見つかれば…、そんな思いを切に感じてしまう作品です。ゲストにボアダムス、OOIOOのヨシミが参加。

 

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