日本竜太さんのレビュー


テスト環境:
CDP
TEAC VRDS25
CDP
SONY D-E01
DAC
DENNON DMD-S10 16ビット0デシベルの位置でαプロセッサをカット
DAT
TASCAM DA-20MKII
DigitalCable SAEC OPC-X1 VRDSとDAC間で使用しています。


●EtymoticResearch ER4S
音質
★★★★★
スピード感 ★★★★★
広がり
★★★★★
ジワジワ感 ★★★★
総合
★★★★★

音楽の写像:
解像度とその描写力によって音情報で脳を満たし、頭の中でオンガクの全体像が浮かび上がってきます。脳がオンガクの為にドライブされ音から 何かに触れたような感覚や何かしら映像的なものがおぼろげながら頭をよぎる..。こうい
う頭の機能と言うのは特定のアーティストにしか持ちえないものだとばかり思っていたのですが、そういうもんでもなさそうです。そのぐらいぶっ飛んだ性能。普段私達の頭はオーディオから出る音は"もともとたいしたこと無いもの"として
はじめから頭が期待して受けとめないような”構え“になってしまっている為に聞き過ごしてきた全ての音が頭の中に立ち昇ります。

雑音拒否権発動:
特徴としてあげておかなければならないのは、なんと言っても空前の遮音性によって必要の無い車内放送をカットしてくれる点。読書や音楽、思考に集中したいときなどとにかくアウトドアで一度使えば普段いかに必要の無い音に自分の精神力が害されているのかが解って来ます。ヨドバシカメラ等での店内放送も通常のボリューム位置を守りながら完全カット。そういう意味でも浮世ばなれした性能と言う事が出来ると思います。ER4を買うということは環境を買うという事と
言ってしまっても過言ではありません。

コンパクトで持ち運びやすいボディー。黒チップで使用しています。後にあげるER4Bとは気分次第で使い分けております。ちなみに入力インピーダンスの事はまったく気にする事はないでしょう。私が使用しているSONY D‐E01(残念ながら
生産終了だそうな)でもボリュームは常に半分程度。気合入れて聴くときでも全開にはなかなかなりません。

まあ、STAX同様に所有して毎日使い込んでいくなかで自分の音楽的な頭までも成長させてくれたり、それによって音楽事体の捉え方が自分の中で大きく変化していくと言ったオーディオ趣味の醍醐味をこの価格で存分に味わえる。幸福とはこういうことなんでしょうね。


●EtymoticResearch ER4B
音質
★★★★★
スピード感 ★★★★★
広がり
★★★★★
ジワジワ感 ★★★★★
総合
★★★★★

ギターのザンザカザン:
ER4Sを持っているのになぜに同じような機種に手を出す方が後を立たないのか..。イロイロ理由はあるでしょうが、私の場合はER4Sに対してある種のハイ落ち感を抱いていた事が原因としてあげられます。ER4Bは見事にこの点を補完してくれました。個人的にはER4Bをはじめから買うという選択もそれほど極端では無い様に感じられるのですがいかがでしょうか?。スピーカーでも少しブリリアントな機種が好きという程度の方やER4Sを知らない方でもER4Bを導入する壁はそれほど高くないと考えて良いと思います。私の場合は予備として購入したというのもあるんですが、今ではER4Sの方が予備になってしまったような..。Sは現在作曲のお仕事をしている私の弟に無期限で貸しております。

ER4BにしてER4Sと比べ何が一番良かったか。バイオリンやピアノのコードを強く打鍵したとき(ショパンの英雄等)も非常にジワジワとしてオーラを放っているのですが、私はポップスやクラシックでのギターのカッティングがとにかく面白
い、この点を指摘しておきます。ギターのカッティングの為にER4Bを選択するというのもありかと..。コンプが掛かったオケの中から普段は聞えなかったギターのカッティングが聞こえるようになる事で全体としての情報が増え、リズム
感が増し、よりオンガクを明瞭に頭の中で結像させる事が出来るようになります。ER4シリーズはとにかく再生情報量が圧倒的に増える事による音楽への理解の深まりかたは他の機種には真似が出来ないかもしれません。

全てはオンガクの為に:
まさにオンガクのためのイヤフォンです。こちらも黒チップで使用しております。遮音性、インピーダンスなどはER4Sと同じすばらしい性能です。子供の頃21世紀の未来と言えばビルの間を透明な管が走り、そら飛ぶ車が行き来しているものだとばかり思っていた僕にとって、実際の21世紀は意外にに子供の頃と何も変わり栄えのしない世界のような気がして少し残念に思っていたのですが、ER4シリーズは子供の頃想像した未来から送られてきた贈り物の様です。ER4シリーズを毎日使ってみて初めて“21世紀おめでとう”と言う気持が生まれてきました。21世紀っていいですね。


●EtymoticResearch ER6
音質
★★★
スピード感 ★★
広がり
★★★★
ジワジワ感 ★★★
総合
★★★

ER4の弟:
音質などはER4に1.5歩譲るものの、国内で市販されている癖だらけの音に慣らされた耳にはこの水準でも十分に“いい音”として耳に心地よい風を運んでくれるはずです。ER4等と比べると全体にレンジ狭く丸い落ち着いた再生音が特徴です。ですが、ボリュームを上げていってもうるさくならない点などは非常に評価できるものです。

購入に当たっては母親への誕生日プレゼントとして購入したので”完全散財”には当たらないと考えていますが、音質に興味があった事もたしかです。難しいところですね。

EraphoneInEarplug:
元々外の音が聞えなければイヤフォンからの再生音が害される事が無いと考えていた私はセルロイドで通常のウオークマンのイヤフォンをかたどり、ハウジングに穴の無いエンクロージャー等を試作していましたが、プロダクトとして出し
てしまうところがなんとも感心してしまうところですね。外述のEX70についても全ての穴に少量ボンドを詰めて遮音性を高めようとしましたが、ココまで完全な遮音を実現するためには耳栓の中にイヤフォンを入れると言う事で無いと実現できないのがERシリーズによってハッキリしました。外の音を無視しようと必死でボリュームを上げ聴力をダメにする手助けを計らずながらも行っている国内のメーカーも見習って欲しいものです。元々ヘッドフォンをつけながら外の音を聞く必要性を感じた事は殆どありませんし、電車でも乗り過ごしたかな?というときには周りを見ればいつもと違う景色で解ります。外部雑音をシャットアウトすれば量販店でも電車でも(東京の大江戸線の黒板で爪を立てたような音もバッチリカット〜)ボリューム位置はオフィスで聴いているときと同じで快適にリスニングが楽しめます。細かい点はイロイロあるのでしょうが、ERシリーズの様に完全に自己責任においての使用であるとの確認をユーザーとするだけで済むはずですし、国内のメーカーも聴力障害の為に国の医療費が増大しないとも限らないので早急にこのような製品をリリースして欲しいものです。


●Sennheiser HD600:
音質
★★★★★
スピード感 ★★★★
広がり
★★★★
ジワジワ感 ★★★★★
総合
★★★★★

テクノな外観:
ER4シリーズと対決させてみようと思い5万円で購入。カーボンファインバーとアルミニウムといういかにもハイスピードそうなフィーチャーで男の子心をくすぐるには十分な内容があります。イギリスのドラムンベースアーティストLTJブ
ケムは今年2002年に新宿リキッドルームに来たときにはこのヘッドフォンでDJをしておりました。以前から雑誌などで見かけていたのですが、オープンエアーの機種でDJをやる方は見かけた事が無かったので衝撃的でしたね。
909系のハイハットの音は結構聴き取りやすいし、遮音性が無くても音がキレイに出ているのでフロアの音に以外に邪魔されないのかもしれません。

音はER4といい勝負:
音のクオリティーではスピード感以外はER4と良い勝負をしてくれます。オープンエアーによる開放感のようなものは思ったほど大きくなく以外に普通だなという印象です。ボリュームを上げていっても破綻せず煩くならない点、装着感のす
ばらしさによって音楽に集中できる点や基本性能等、これだけ持っていて後はいらないやという向きにもお勧めできます。その他付属のハードケースなど、オーナーシップに訴えかける演出によって“とっておき”そんな言葉が似合う名機と
なっています。


●Sennheiser eh2200:
音質
★★★
スピード感 ★★
広がり
★★★★
ジワジワ感 ★
総合
★★★

1週間借りてみた:
まずはじめに気が付くのはハウジングに両耳を収めたときにまるで海岸で貝に耳を当てて海の音がする宜しく、海の音がします。海のヘッドフォンそんな感じ。再生音はドンシャリながらも比較的素直でテクニカのヘッドフォンをより精
悍にした印象。ちなみにこれは友人が所有しているものを10日前後借りたときの印象です。


●Senheiser MX500:
音質
★★
スピード感 ★
広がり
★★★
ジワジワ感 ★★
総合
★★

音質良し、遮音性無し:
ER4を除くインナーイヤーのイヤホンの中ではトップクラスの性能を誇り、同じMDR-E888などよりもリーズナブルな価格設定で人気の機種。独特の癖は否めないが悪くは無い。E888(後期型、前期型は今の888よりもよかったのだそうな、聴いてみたい)よりも基本性能は上。遮音性が無いので外で使うと聴力を悪くしそうだが、テレビを深夜に見たりする用途にはいいのではないだろうか、着脱もかんたんなウオークマンタイプ。Aprox.2000円



●SONY MDR-Z900:

音質
★★★★
スピード感 ★★
広がり
★★★★
ジワジワ感 ★★
総合
★★★

頑丈:
とにかく壊れない。以前DJ用に使用していたテクニカのモデルでは3回の遠征でハンガーの部分がバックの中で圧壊してしまっていましたがとにかく壊れない。折りたためるのも所もなかなか良いですね。ハウジングの支持部に不必要な“関節”が無いので予期しない失敗も少なくホントにプロのことを考えたDJ用のヘッドフォンだな。という印象です。

音質は中の中:
普段はDJの時にBPMをあわせる用途にしか使用していなかったものをこの機会にちゃんとしたオーディオ機材につないで見るとやはり音の鮮度やスピード感はHD600やER4にはまったく及びません。価格を考えるとこれも仕方が無いのかもしれませんが音楽鑑賞を主な目的として考えられているのであれば、他の機種を検討されたほうがよいと思われます。低音は100HZ当たりにピークがあって煩くは無いのですがキックの音によってお皿で小節の頭を出すためにつくってあります。曲を作るときに使うとちょうどこの辺の帯域がボワつくのがあらかじめ抑えられ、マスタリングがやりやすかった経験から曲作り用のヘッドフォンとしても使用しています。こういう用途での使用も良いのではないでしょうか。道具としてのヘッドフォン。まさに実用志向ですね。


●SONY MDR-900ST:
音質
★★★
スピード感 ★★
広がり
★★
ジワジワ感 ★★
総合
★★

痛感神経に響く音:
あからさまに痛い音がするヘッドフォンです。リスニングと言うよりもマスタリング時などにそのままCDになると痛いような音をあらかじめ取っておく作業には最適です。”痛い音の顕微鏡”として私もマスタリング作業の際にはノイズ確認をER4で行っている以外はこの900STで仕上げる事にしています。どう言う風にいじったらこういう音でCDに入るだろうな..。そんな微妙なバランス取りを支援してくれる非常に優れたツールです。

音質よりも道具として:
Z900もそうですが完全にプロが使うツールといった趣です。細かいところが聴き取れると言う性能でもER4には遠く及びませんし、スピード感がことさら優れてるわけでもありません。ですが痛い音やリスナーがびっくりしてしまうようなソースの癖をあらかじめトラップしておくためには最高のヘッドフォンだと言うことができるでしょう。癖を取りきってしまっても面白い曲にはならないんですがそれはまたの機会に...。


●SONY EX70:
音質
★★
スピード感 ★
広がり
★★★
ジワジワ感 ★★
総合
★★

エージング後花開く:
とにかく1ヶ月間エージングしてみましょう。エージングによる音質変化を否定する向きにこのイヤフォンを試していただきたい。開花後はレンジ感こそ無いがわかりやすくソフトな印象でイヤな音ではない。外部雑音の混入も普通のウオークマンタイプのイヤフォンに比べればマシなほうなので、外部雑音で音が汚れるぐらいならこっちをお勧めいたします。

消音の為にダクトを塞ぐと低音が出なくなるのでハードにエージングしてやると以前の水準で比較的収まりの良い低音が手に入ります。クリップしない程度のレベルでCDをリピートしたままおやすみなさいして下さい。そういう宿命を背負った機種ですが普通の店で買えるイヤフォンの中では総合評価1位(エージング後)。


●KOSS ThePlug:
音質

スピード感 ★
広がり
★★
ジワジワ感 ★
総合


評価以前の音質に唖然:
装着法が悪かったのかと試行錯誤をくりかえしたがこういうものらしい。やすいのでダメな見本としてはどうでしょうか。爆音エージング(ちょっと壊れても良いや程度の音で3日ぐらい放っておいた)を行ったらEX70の半分ぐらいの水準
にまでは漕ぎ着けましたが。そこまでして使うものかとも思う。遮音性も期待ほどでもなかった。


●Audiotechnica ATH-U8M
音質
★★
スピード感 ★
広がり
★★★
ジワジワ感 ★
総合
★★★

独特だが的を得た装着感:
ヘッドバンドが下にくるこのヘッドフォンによって長時間(6時間以上)のシーケンス作業時にヘッドバンドで頭皮が鬱血する事が無くなり非常に重宝していましたが、最近は音がビリつくようになってしまい残念です。同様のUヘッドフォンシリーズは現在生産終了でありニューモデルも出る気配はありません。総合評価は装着感の良さを加味してこうなりました。




というわけで好きな機種も嫌いな機種もイロイロ聴いてみて思った事を素直に書いてみましたがいかがだったでしょうか。個人的には無理をしてでもはじめに良い機種を手に入れ、それをずっと使いながら浮気をしない、といったスタイルが一番経済的で嗜好品的な効用も高いしお勧めなのであえて製品の値段はあまり掲載しませんでした。食べ物でも安くても嫌いなものってやっぱり食べたくないじゃないですか。音だってやっぱり頭に好きな音が入ってきてくれる事を待っているはず。好きな音が入ってきたときにはあなたの頭の中の音楽の扉が開き素晴らしい音の認識とともに好きだった曲の音楽の部分をより深く味わえるようになると思いますよ。



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