reference quality earphones
Etymotic Research ER-4S         
         "Canal Phone" Earphones
The "MicroPro"(TM) Series




ER-4シリーズの購入には、国内正規代理店のイーディオが便利です。個人輸入すると多少安く手に入りますが、初期不良などのトラブルやアフターケアについても考慮しましょう。

ER-4_all_s.jpg (39553 バイト)●ER-4Sとは?

 ER-4Sは、アメリカのEtymotic Research社が開発した、超Hi-Fiイヤホンです。Etymoticは"et-im-OH-tek"(エティモゥテック)と発音され、"True to the ear"という意味だそうです。 Knowles Electronics社に勤めていたMead Killion氏によって1983年に創立された若い会社とのことです。Etymotic Researchでは聴覚に関する製品の研究開発を行っており、この分野に関する多くの特許を保有するプロフェッショナルです。製品は音響実験等に使われる測定器具や試験装置がメインですが、ER社の特許技術を応用した国産の補聴器も見かけます。

 ER-4Sは、このようなEtymotic Researchの音響方面の研究から生まれました。音響方面の研究成果を存分に活用して、工業的・科学的な手段で音質を向上させるような構成になっていて、いかにも補聴器メーカという感じがします。

 ER-4Sは、市販の耳栓のように、密閉材を耳道(Ear Canal)の奥深くに挿入して使います。こうすると優れた低音のレスポンスが得られ、周囲の雑音をカットできます。似たような装着法のイヤホンに、スタックスのSR-001(mkII)やSONYのMDR-NC10「大仏耳」q(-_-)p、MDR-EX70SL、KOSSのThe Plugなどがありますが、ER-4Sでは密閉の度合いが非常に高くなっています。

<特長>

  1. 音質で最高と言われるコンデンサ型ヘッドホンに匹敵する、あるいはそれ以上の音質
  2. 使用にあたっては特別な装置が必要なく、普通のイヤホンのように使え、ポータビリティ抜群
  3. 人間の聴覚に最適化された自然で正確な周波数特性
  4. 優れたトランジェント・レスポンス
  5. 周囲の騒音を20 - 25dB低減する優れた密閉度
er-4s_insertion.GIF (35988 バイト)
耳の奥深くに挿入するため密閉度が非常に高く、遮音や低音のレスポンスに優れる

 

●付属品

 パッケージには、イヤホン本体の他に、写真のようなハード・ケース、キャリング・ポーチ、白いゴム製の密閉材3ペア、黒いスポンジ状の密閉材5ペア、フィルター交換器(緑色のフィルター4つ付属)、金メッキされた標準プラグアダプター、シャツ・クリップ、使用説明書、2種の注意書き、が含まれます。
 
説明書には取り扱い方法の他、Etymotic Researchその他による音響方面の研究結果がER-4にどのように応用されているかが簡単に記されています。後述の騒音による微小音のロスや周波数レスポンスのグラフの他、イヤホンの挿入の深さによってどれくらいレスポンスに差があるかも書いてあります(これは旧版の説明書の内容で、現在の説明書はモダンなデザインで読みやすくまとまっている半面、学術的な内容は削除されてしまいました)。

 その他、CEMA (Consumer Electronics Manufacturers Association)から発行された注意書きが入っていました。これは、リスナーの聴力を守るために、安全音量を超える音量で聴かない様警告する文書(‘WE WANT YOU LISTENING FOR A LIFETIME’)で、アメリカらしさが感じられます。日本の製品ならば「音漏れで他人に迷惑をかけないために」音量を絞れと書いてあるところです。ユーザに要求している事は全く同じでも、その理由が違うという点は興味深く、お国柄の違いを垣間見るような気がします。

 大企業の製品ではありませんが、品質管理は非常に厳しく行われています。パッケージとイヤホン本体に、LR別々のシリアル#が打ってあります。修理等を依頼する際には、これらのシリアル#を確認することがあります。


●「世界で一番正確な音」を確信させる超高音質


 HeadRoomの測定結果を見る限り、周波数特性、過渡特性ともに、STAXのSignature + T1Wなどのシステムより格段に優れた結果を見せています。もちろん、これだけでは「ER-4Sの方が音がいい」とは言えませんが・・・。
 特に過渡特性については、振動盤が小さく軽いこと、動かすべき空気が非常に少ないことが効いているような気がします。コンデンサ型以上に「コンデンサ型っぽい」音を聞かせるイヤホンと言えるでしょう。はじめてER-4Sの音を聴いたときは、「汚れたメガネをピカピカにしたような」気がしました。このイヤホンはいわゆる「解像度バリバリ系」と考えられるイヤホン・ヘッドホンの中でも極端なものにあたると思います。

 以下に、幾つかの異なる視点から、ER-4Sの音質について思うところを書いてみました。

<周波数特性>
 Etymotic Researchでは音響方面の発展的な研究を数多く行っています。ER-4にはそれらの研究成果が活かされています。周波数レスポンスがその一例。
 ヘッドホンの周波数特性は、必ずしもフラットなのがよいとは限りません。人間の耳の特性は実はフラットではありませんし、仮にフラットな特性のヘッドホンでも、鼓膜に音が届くまでの過程で音が変化し、鼓膜が受け取る音の周波数特性は別のものになってしまうからです。
 ER-4シリーズでは、ヘッドホンそのものの周波数特性ではなく、鼓膜の位置での周波数特性を考えています。diffuse-field equalizationと呼ばれる方法を使って、鼓膜が受け取る音の周波数特性が、人間の耳のそれに一致するように設計されています。

 ですから、ER-4Sの周波数特性は、実に奇妙なグラフを描きます。低域から1KHz位までは極端といっていいほどフラットなのですが、それ以降3KHzあたりを頂点として、約14dBの広くて大きな山があります。このことは、人間は3-4KHzの音にもっとも敏感であるという良く知られている事実に一致します。

 このような周波数特性を実現するために、ER-4Sではコードの中間にあるパイプ部にイコライザ回路を設けています。

<解像度・過渡特性・追従性>
 自分の耳で聴いてみると、Headroomの実測値がハッタリでないことが実感できます。矩形波を再生してみると、普通のヘッドホンでは「プツンプツン」という音になってしまうところが、ER-4Sでは「プツ!プツ!」と歯切れ良く再生されます。「プチップチッ」のような、ノイズを伴った感じも一切ありません。瞬間的な振動盤の動きが俊敏で、余剰な振動が少ない事を窺わせます。加速度の速いパーカッションのような楽器の音がシャープな音像で再生されます。

 クラシック音楽を聴いていると、特に微小音の再現に優れていることが分かります。大音量のクライマックスでも、今まで聴き取れなかった、複雑に重ねあわされた小さな音も聴き取れ、動的S/Nも非常に高いものです。音が圧縮された感じがありません。小音量部でも、ダイナミック型とは思えない繊細な表現をします。

 リニアリティが良いという一言につきます。周波数特性が正確と言う事もあり、グラフィックイコライザをいじっていると、変化が手に取るように分かります。

 類似のキャラクタを持つSTAX同様、録音の弱点はすぐに見つかってしまいます。それだけに、優秀録音に出会ったときの喜びは大きなものです。

<クリアなボーカル−中域>
 歪み感や耳障りな感じがない、優れたヘッドホンに共通の特徴を備えているように思えます。3KHz近辺に14dBもの山があることを考えると、ボーカルの「さ行」が耳を劈くような音になるのではないか、という疑惑が沸いてきますが、実際に聴いてみると全然そんなことはなく、極めて自然な音質です。

 オーケストラのストリングスも平板な感じがなく、絹ずれのような心地よい音の揺らぎがしっかりと表現されます。中低域から中域にかけての密度感は抜群によく、ER-4Sの後に他のヘッドホンを聴くと「粉っぽい」感じがします。小音量でもディテールが効いていて、大音量では歪感やうるささといったものがありません。
 ソロ・バイオリンを聞いてみたところ、そのテクスチュアの細やかさはエレクトロスタティック型に勝るとも劣らぬものでした。スピーカでは再生が難しいチェンバロやピアノの倍音成分も、このイヤホンなら堪能できます。

<正確無比!!−高域>
 あとに述べるように、Sバージョンの高音は控えめですが、非常に丁寧で、「聞かされる音」ではなく「聞きたい音」になっています。特にシンバルの音はおろしたてのレコード針から聞こえてくる、「シーン、シーン」という、心地の良い音を思わせます。
 ロック音楽を聴いてみると、普通のヘッドホンではでは「シャンシャン、シャカシャカ」とただうるさいだけのシンバルが整った音で再生され、「ここはこう演奏していたのか」と再認識させてくれました。ER-4Sの高音の正確さは、聴いた人にしか理解できないでしょう。筆舌に尽くしがたいものがありますが、あえて言うなら「身の毛がよだつほど正確」。まるで、1ビット1ビットが音のツブツブとなり、そのシャワーを浴びているような気分です。
 高音は波長が短いため、位相特性をコントロールするのが難しいそうですが、このイヤホンは音の出口が非常に小さなノズル状になっていますので、機械的にはとても有利なのではないでしょうか。

<特徴的な低音>
 ER-4Sのような超小型のイヤホンを見て心配になるのは、低音が十分であるか否か、という点でしょう。

 ER-4Sの低域のレスポンスは、他の世界的に有名なハイエンド・ヘッドホンと比べても、非常にフラットになっています。普通のヘッドホンは、大なり小なり低音に問題を抱えています。たとえば密閉型のヘッドホンでは、超低域から中低域にかけて、暴れがある製品が良く見受けられます。また、セミ・オープン型では中低域はフラットなものの、それより周波数が下がるにしたがって、段々と減衰していくものがほとんどです。

 スペック上周波数特性が5 - 30,000Hzといったヘッドホンはザラに見かけますが、その表示の条件はかなり甘いようで、可聴域でもかなりの乱れが見られるのです。その点、ER-4Sは低域に限らず、ほぼ全可聴帯域において、周波数特性が信じられないほど正確です。特にこもり感の原因になったり、耳についたりしやすい中低域は、ほとんどまっ平らです。楽器でいえば、ベースなどの楽器の低音が非常に良く聴き取れます。スピーカで言えば、数十万円クラスの製品に匹敵するといえるのではないでしょうか。さらに、スピーカの場合、室内音響によって特に低域が大きな影響を受けるため、よほど音響的にコントロールされたリスニングルームに設置しなければ、正確さの点ではER-4Sの足元にも及ばないでしょう。

 にもかかわらず、スピーカで聞く低音は、腹に響きます。これは、低音が骨伝導で聴かれることと、皮膚を打つ感覚が感じられるからだとよく言われます。低音は、50Hz以下の周波数では鼓膜で「聴く」よりも、「感じる」方が重要になります。

 それに対しヘッドホンでは、鼓膜と耳の周辺の皮膚にしか振動は伝わってきませんので、どんなに低音のレスポンスが良くとも、スピーカのような力強い低音感は得られません。ER-4Sでは更に不利で、その装着形態ゆえに、低音の振動は鼓膜にしか届きません。したがって、ER-4Sでは、優れた低音のレスポンスの割に、そのような非常に低い周波数は聴き取りにくくなります。実際に聴いた感じとしては、キックドラムの音など打楽器系の音では「パンチが効いた」感じがなく、ややソフトな感じで再生されます。


 このような特殊な低音も、「慣れ」によってある程度聞こえ方が違ってきます。使いはじめて、1週間くらいで「分かった!」という時が訪れます。こうなればしめたもので、スピーカのような空気を揺るがすような超低域は「感じられない」けれど「聴く」ことによって「思い描く」ことができるようになります。低音のレスポンス自体は非常にフラットなので、他のヘッドホンよりも低音の雰囲気を感じられるような気がします。オーケストラのクライマックスではホール全体を揺るがすような大音響の空気感が良く伝わってきます。スピーカではありがちな、大音響で音が崩れるということもまったくありません。あっさり系の低音のため、クラシック音楽ではオーケストラの残響音がもこもこしたり、ヴァイオリンが本物以上に大きな胴を持った音のように感じられたり、ピアノの分離が悪い、といった事がありません。
 ER-4Sは、低域に味のあるイヤホン(THE PLUGなど)に比べると低域が不足しているという意見もよく聞かれます。しかし、しばらく聴きこんでみると、普通のイヤホンの低音にはER-4Sの空気感や質感が伴っていないことに気づきます。ER-4Sの低域は少なくともデータシート上は十分にフラットで、本当の「低域不足」とは違うと考えています。ためしにイコライザで低域を持ち上げてみると、驚くほど素直に応答して、ER-4Sらしからぬグルーヴィな音になります。ソース次第ではいくらでも量を出していける高い再生能力を持っていると思います。ハードロックなどは、90年以前の古い録音は低域、高域ともに不足している場合が多く、ER-4Sではその弱点をそのままさらけ出してしまう感じで、あまり面白くありません。しかし、90年以降のデジタル機材でマスタリングされた録音の多くはきわめてワイドレンジな印象で、懸案の低域も驚くほどの質・量で鳴らします(逆にこういったソースを低域に味のあるイヤホンで再生すると、しつこく感じられるものです)。低域以外にもいえることですが、周波数バランスはソースとの相性抜きには考えられない上、こと低域は個人個人で好みの量がばらつくものです。難しいですね。

<その特殊性ゆえに...>
 正確なことこの上なく、ヘッドホン自体のカラレーションが少ないことは、確かにいいことなのですが、面白みのない音だと言えなくもありません。今まで一度も高級ヘッドホンを使ったことがない人にこの製品の「すごさ」を理解してもらえるかどうかは分かりません。「オーディオ機器に大枚を投じるのはこれがはじめて」という人が、腹に響く低音や豊かな音の広がり感に憧れてしまうのは、無理からぬ事です。ヘッドホンの場合でも、初心者の方が高級ヘッドホンに期待するのは、迫力・スケール感のある、余裕の重低音ではないでしょうか。そのような観点からは、ER-4Sはインプレッションの弱いイヤホンであると言わざるを得ません。あまりにソースに忠実に、さらりと演奏されるので・・・。また、鼓膜に直接音が届くので、「自然な広がり感」は狭く、「オーディオは2つのスピーカで再生する以外はダメだ!」という信念を持ったオーディオマニアは往々にしてヘッドホンを嫌うものですが、そんな中でも一番最初に拒否されそうです。

 逆に、すでにある程度のグレードのオーディオ機器を持っていて、普通の大型ヘッドホンやスピーカが、どのような弱点を持っているのか知っている方がER-4Sを手にされると、その透明な音質にびっくりされるようです。すくなくとも、「適当に聴いていても良い音を鳴らしてくれる」タイプの製品でないことは確かです。ER-4Sの音は、積極的にディテールに聴き入るというリスニングスタイルでないと、なかなか分かりにくいかも知れません。

 

●周波数特性について

 ER-4Sのスペック上の周波数特性は、一見、国産の1000円のイヤホンにすら劣っているように見えます(20Hz-16,000Hz)。作者も、ER-4Sを実際に購入してみるまでは、この点が気がかりでした。

 実は、ER-4Sの周波数特性の表示は、他のイヤホン・ヘッドホンのそれとは違った意味を持っているのです。

 というのも、(繰り返しになりますが)ER-4Sでは、人間にとって自然な周波数特性を再現するべく、音響工学的な研究結果にもとづいてEQが掛けられているからです。このような創意工夫は、他の国産のヘッドホンでは見られません。

 一般のヘッドホン・イヤホンでは、仮にヘッドホン自体の周波数特性がフラットだとしても、それぞれの装着形態(「耳乗せ型」(supra-aural design)、「耳覆い型」(circumaural design)、「インナーイヤ型」など)の違いによって、鼓膜が受け取る音の周波数特性は別々になるはずです。というのも、耳の穴は一種のフィルタとして働き、実際に鼓膜に音が届くまでには周波数特性が変わってしまうと考えられるからです。

 したがって、仮にヘッドホン自体の周波数特性がフラットだとしても、人間が本来フラットな音であると認識する音からは、何dBもレスポンスがズレた音として聞こえるだろう事が予想されます。 しかも、一般的なヘッドホンの周波数特性は、かなり甘い基準で測定されたものです(普通、10dBを上限として表示されます)。

 ER-4Sのスペックシートに表示されている周波数特性は、研究で得られた人間の耳の周波数特性(diffuse-field response)を基準として表示されていて、他のヘッドホンの表示とは基準が違います。それに、16KHzの超高域の音が出ていないわけではありません。ER-4Sの周波数特性を測ったグラフを見ると20kHzなどの超高域の音は減衰しているように見えますが、別の実耳特性グラフ(re:DFカーブ)を見ると、超高域も十分すぎるほどに再生しているように読みとれます(ただ、16kHz以上の領域ではER-4Sの性能以前に、人間の耳の特性自体が正確にはわかっていないという問題もあるそうです)。カプラで測ったほうの特性をみると最右端では相当に急峻なカットオフがあるので16KHz以降の再生は怪しいといわざるを得ませんが、ER-4Sのパルス応答はリンギングも少なく、とてもきれいなものです。オーディオテストCDで、フラットな音と18kHz以上カットの音とを注意深く聞き比べてみると、やはり違いがあるように感じました。

 ER-4Sの本来期待されるdiffuse-fieldフラットネスからの差をあらわしたグラフがこちらにあります。また、HeadRoom社がノイマンのダミーヘッドを使って測定した結果も、スタックスやゼンハイザーのようにER-4Sよりも高価なヘッドホンよりもずっと滑らかなグラフになっています。おそらくER-4は可聴帯域のほぼ全域において、世界で最も『正確』なヘッドホンではないかと思います。

 

●周囲の騒音の低減

 ER-4Sのもう一つの重要な能力、それは遮音性です。
 ER-4Sはまるで耳栓のように、耳の奥深くに挿入して使うため、周囲の騒音を普通のヘッドホンとは比べ物にならないくらい、聞こえにくくすることができます。
 具体的な遮音能力は約25dBですから、市販の耳栓と同じくらいです。

 異論もあるでしょうが、作者はソニーのMDR-NC10「大仏耳」よりも確実に優れていると思います。MDR-NC10は、電子的な手段で約10dBの騒音を除去することができますが、位相の問題から、除去できる音の範囲は1.5KHz以下の低周波に限られてしまいます。人間の耳はそれよりももう少し高い周波数の音(3-4KHz)に敏感なので、もうひとがんばりといったところ。さらに、電池駆動のため、かさばります。これに対しER-4Sは純音響的に遮音しているだけなので、遮音する音の周波数に特に制限はありません。むしろ、低周波音よりも耳につきやすい高周波音の遮音性が高くなっています。

 「遮音性なんか、一体何の役に立つのだろう?かえって、電話のベルが聞こえなくなって不便ではないだろうか?」と思われるかもしれません。でも、とても役に立つんです。


[ER-4Sで聴覚を大切にしよう!]
 「ER-4Sは鼓膜にダイレクトに音が届くので聴覚に悪影響を与えるだろう」----かなり多くの方が、そのように思われるかもしれません。しかし、実はその逆です。

 普通のイヤホンやヘッドホンでは、騒音の多いところでは、それをかき消すために相当音量を上げなければなりません。外国の研究では、オープンエアのヘッドホンを用いて静かな室内で音楽を聞く際、被験者は平均で69dBの音量を快適音量と判断しました。しかし、屋外の65dBの騒音(込み合ったレストランでの騒音に相当)の中では、被験者は音量を80dBくらいにセットしたそうです。

 このような大音量では、聴覚に深刻な影響を与える危険があります。一般に、80dBを超える大音量に長時間さらされると、聴力に深刻な悪影響を与えるといわれています。電車の中で、他人の迷惑になるほどの音を漏らしながら音楽を聴いている若者がいるとしたら、その人は自分の聴覚を相当、危険にさらしているといわねばならないでしょう。

 ER-4Sならそういった心配はありません。ER-4Sの遮音性を持ってすれば、ほとんど常に安全な音量で十分に音楽の微小音を聴くことができるからです。ボリュームを上げる必要がないのです。またER-4Sは遮音性が高いおかげで、音漏れで周囲に迷惑をかけることもありません。

 また、聴力がどれくらい危険に曝されているかということを考える際には、瞬間的な音圧レベルだけでなく、それだけの音圧にどれだけの時間曝されているか、また、一日のうちで曝されるその他の騒音の音圧とその時間の組み合わせ、などを考慮しなければなりません。ER-4の取扱説明書では、ER-4シリーズでは快適音量を小さく保てるため、より長い時間、安全にリスニングを楽しむことができるとしています。

 難聴を治療するのは、現在はまだ非常に困難のようです。みなさん、ボリュウムは控えめにしましょうね!


[電車・飛行機の中で]
 
このようなER-4の遮音性が特に電車や飛行機の中で役に立つのは明らかです。

 具体的な目安を示します。
 私が普段携帯しているMDプレイヤーのSONY MZ-R5ST(出力5mW + 5mW)を電車で使用する場合の快適音量は.....

 ・ロック音楽で17/30 - 20/30
 ・クラシック音楽(試したのはハイドンの弦楽四重奏)で20/30 - 22/30


 また、CDプレーヤのSONY D-E01(出力15mW + 15mW)では、

 ・ロック音楽で15/30 - 18/30
 ・クラシック音楽で 18/30 - 20/30


 といったところです。ER-4Sの1KHzでの感度を参考にすると、おそらく70dBをやや下回る程度の音量ではないかと思います。

 音楽に集中するためか、クラシック音楽でも演奏中はほとんど電車の音は聞こえません。無音部になると、車内アナウンスや電車の音が聞こえますが、それでも遮音性はかなりのものです。周りの人が話している内容は聞き取れません。駅に到着し、イヤホンをはずしてみると、周りの世界が予想していたよりもうるさく感じられます。


[室内でも役に立つ遮音性]
 ER-4S/B(共通)の旧版の取扱説明書によると、一般的な家庭の騒音(43dBA)であっても、23dB相当の聴力のロスを起こすそうです。このような環境では弱い音は騒音にマスクされてしまうため、微小音を聴くためにはボリュームを非現実的なレベルまで上げなければならなくなります。すると大きな音(100dB SPL以上)は人間の耳をオーバーロードし、5-10%相当の歪みを引き起こします。小音量では音楽の微小部が聞こえないし、大音量では音楽のピークが歪んで聞こえる、つまり我々音楽を聴く側のダイナミック・レンジが狭まってしまうと言う事です。専用のリスニングルームをお持ちの方でも、夏冬にエアコンを入れたときに、このような経験をしたことがあるのではないでしょうか。

 ER-4は優れた密閉性能でもって、周囲の騒音を20-25dB低減し、不快レベルまで音量を上げなくても、微小音のディテールを楽しむことができます。市販の耳栓をしている程度の効果があると想像してください。静かな部屋で使用すると、エアコンの音、パソコンのファンやHDDの音、マウスをクリックする音、外を走る自動車の音などはほとんどに聞こえなくなります。

 世に優れたヘッドホンとして名の通った製品(スタックスやゼンハイザー、AKGなど)の殆どがオープン・エアであることを考えると、遮音はER-4シリーズの大きな財産と言えます。

 ダイナミックレンジの幅が大きいクラシック音楽の録音は、遮音の恩恵を受けられるソースの一つと言って良いでしょう。静寂と楽音の対比が、より鮮やかに描き出されます。

 
●2種類の密閉材er-4up_s.jpg (15765 バイト)

 ER-4には2つの密閉材が付属しています。

 1つは白いゴム製の密閉材(white flanged ear tip、括弧内はEtymoticの呼び方、以下同様)で、こちらが標準ということになっています。一見するとシリコン製のように思えますが、実はこれ、ポリウレタン製なのだそうです。
 耳の上の方(何と呼ぶのでしょう)を外側上に引っ張りながら徐々に挿入するよう、説明書に書いてあります。
 正しく密栓するのはコツがいりますが、うまく行くと素晴らしい低音が得られ、騒音をシャットアウトします。
 惜しくも耳の形が合わず、不快感を感じたり、正しく密閉されない場合は、アメリカ国内であればカスタムメイドの密閉材を作ってもらうこともできるそうです。日本ではどうなのでしょうか?今のところその必要は感じていませんが。
 (カスタム・イヤモールドに付いて興味のある方はこちらこちらをごらんください)
 写真のRチャンネルは密閉材を外したところです。先端部から、緑色の防塵フィルターが見えます。

 この密閉材は石鹸水で洗う事ができるので、かなりの長い期間にわたって、清潔に使用し続けることができます。

 

foamtip_s.jpg (14764 バイト) もうひとつは黒いスポンジ状の密閉材(black foam ear tip)で、市販の黄色い耳栓(イアー・ウィスパー)のように、人差し指と親指で挟んでクルクルと回しながら小さく丸めて、耳の中に入れて自然に膨らむのを待ちます。耳への圧迫感が少なく快適性は高いのですが、騒音のシャットアウトでは白い密閉材のほうが上です。加えて品質の劣化もこちらの方が早いという問題があります。
 ただ、白い密閉材より快適なことは確かで、スタックスのSR-001(mkII)の装着感が気に入らなかった人には朗報かもしれません。
 白い方に比べ、装着がとても素早くできます。膨らむのを待つ時間を入れても数秒で済みます。
 白い密閉材と違い、水洗いができないため、使い捨てと言う事になっています。

 Etymoticは「両者に音響的性能の違いはない」と主張していますが、実際には白は低域が非常に良く出て遮音性も高いような気がします。作者は白の密閉材の使用をおすすめします。黒は高域がかなり増したような感じで、ER-4S+黒がER-4B+白に接近してしまうほどです。

 

 

●慣れてしまえば大変快適な装着感

 この様に、黒い方の密閉材は快適な装着感が売りで、誰でもすぐに快適に使える事と思います。基本的に、装着感は市販の耳栓と変わりません。

 しかし、消耗品の調達が少々面倒である事を考えると、白い密閉材とも上手く付き合いたくなります。問題は、この密閉材の装着感。一般の方にとってはかなり奇抜なものでしょう。私の場合、正直、最初の1週間は、耳の中に異物を入れると言う独特の装着感になじめずにいました。また、上手く密閉度を上げるコツが分からず、いたずらに強く押し付けたりして、耳の奥が痛くなってしまったこともありました。
 しかし、全ては慣れるとどうということはありません。しばらく使っているうちに異物感にも慣れ、密閉のコツも良く分かり、簡単に装着できるようになりました。今では、黒い密閉材のお世話になることはありません。
 白チップの使い方にはミソがあって、それは1ヶ月くらい使い続けるということ。使っているうちに、材質が柔らかくなってきて、耳あたりがソフトになります。手放す前に、しばらく使ってみましょう。

 結局のところ、しばらく使っているうちに9割の人は快適な装着感であるという結論に達するようです。米国人の耳道と我々のそれとではまた違うかもしれませんが、私にとっては快適です。イヤホンをしたまま眠ってしまう事もしばしば。

 作者のようになじむことができれば、装着感は非常に良いと断言できます。眼鏡を常用する人間にとっては普通のヘッドホンと違い側圧がないというのは大いなる救いです。頭に数百グラムの重石を乗せることで肩が凝ることもなく、耳覆い型(Circumaural Design)のヘッドホンのような汗かきによる「蒸れ」からも解放される。また、邪魔にならないため、寝転がった状態でも快適に使用することができます。これらは私にとって革命的でした。寝転がって肩肘ついても干渉するハウジングが一切ないため、TVを見るときなど大活躍しています(おやぢくさいですね)。

●フィルター

 右の写真は、フィルター(green filter)とフィルター交換器(filter changing tool)です。filter_s.jpg (14921 バイト)
 フィルターは、イヤホン内部にゴミ(耳垢etc.)が入るのを防ぐためのものです。イヤホンの音が歪んだり、弱くなってきたらこのフィルターを交換しなくてはなりません。小さな金属製のバレルの内側に、緑色のメッシュを貼り付けた構造になっています。
 フィルターは非常に小さくて、紛失しやすいので、交換器の中に収納できるようになっています。
 フィルターを交換するときは、交換器のスクリューをイヤホンにねじ込んで、古くなったフィルターを引っ張り出すようにします。

●インピーダンス&ヘッドホンアンプについて

 ER-4Sの100Ωというインピーダンスは、国内の標準的なヘッドホンと比べると少し高めですが、海外製としては別段珍しい値ではありません。ポータブルオーディオ機器につないで使う場合でもまったく問題なく使うことができます。ER-4Sの実力を100%発揮するには本当はポータブルヘッドホンアンプがあった方が良いのですが、直につないでも十分な音質です。ポータブルという視点からER-4Sのライバルになり得る製品としてスタックスのSR-001がありますが、アンプなしでも使えるのは、大きな意味を持っていると言えましょう。

 家庭用のオーディオ機器(ラジカセ、ミニコンポ、据え置きCDプレーヤ、プリメインアンプなど)ならば、ほぼ間違いなく、問題なく使えるでしょう。

 ただし、つなぐ機器によってはノイズが問題になることがあります。もし、普通のヘッドホン(安いもので良い)を今使っているオーディオ機器につないでみて、ノイズが出るようなら、おそらくER-4Sをつないだ場合にもそのノイズは聞こえるでしょう。ラジカセやミニコンポのヘッドホンジャックには、シャー音やハム音、モーター音が混ざったりすることがあります。プリメインアンプも、シャー音が気になる場合が結構多いようです。

 ポータブル機器でも、ほとんどの場合問題なく使えます。しかし、最近のポータブル機器は電池の持ち時間を長くするために、消費電力を極端にケチっていて、音質的には一昔前の製品に比べ悪くなっていると言われます。ポータブル機器に最初からついているような安手のイヤホンでは音質の差は気になりませんが、ER-4Sはつないだ機器の弱点をも明確に描き出してしまうほどの性能を持っているので、音にうるさい方は不満を感じるかもしれません。

 単体ヘッドホンアンプを導入すると、まったくノイズの無い(文字通り)クリアな音を楽しむことができます。音自体も激変はしませんが、確実に良くなります。ER-4Sのポテンシャルをフルに発揮させるために、できればヘッドホンアンプを用意したいところです。「音の顕微鏡」としての解像度が一段とアップします。

●欠点


●ホームユースとしても

 ER-4Sはある意味、無味乾燥な科学的な方法論で作られた、非常に正確なヘッドホンです。趣味としてのオーディオとは、少しベクトルの違う製品かもしれません。しかし、音はとても良いので、ポータブルユースのみならず、オーディオマニアが室内で使うイヤホンとしても最適です。スタックスにも負けない内容を持っていると思います。

 ER-4Sは単独でもすばらしい性能を持っていますが、単体ヘッドホンアンプや上質のCDプレーヤなどと組み合わせると、さらに良い音質で楽しむことができます。
 質の悪いヘッドホンでは、ヘッドホン本体が全体の音質を支配してしまう(CDプレーヤやアンプなどの電気系統は安くてもそこそこ性能が良い)ものですが、ER-4Sならば足を引っ張ることなく、他のコンポーネントの質の差を見事に描き出してくれるでしょう。突き詰めていくと、「非常に正確な音を出すオーディオシステム」や「音を顕微鏡的に、精密に聞くことができるオーディオシステム」といった独特の方向性のイヤホンメインの構成が可能でしょう。

 

●最後に

 ER-4Sは無駄のない製品です。
 普通のオーディオメーカのカタログを見ていると、性能の向上に価格分の貢献をしているとは思えないような部品にお金をつぎ込んでいるように思います。曰く、コードの線材や絶縁材料に高級素材を使った、インシュレータに外国製の高級品を採用したなど、など。中には、ノイズに弱い回路など特殊な部位に、性能を確保するために本当に高級な部品を使わざるを得ない場合もあるでしょう。でも、多くの場合、どうしても必要な理由も無いのに、無駄に使っている気がします。高価なワインと同じように、中には細かな部品の違いを聞き分けるリスナーがいるはずだというのが、メーカーの言い分です。周波数特性や歪率ばかりを追いかけても、実際の音とは結びつかないというのはあるでしょう。また、人間にとって「良い音」とは、物理的な音波以外にも、その日の気分や、使っているオーディオ機器に対する信頼感、満足感などの精神的な要素が大きくかかわってくるものです。趣味としてのオーディオは(言葉は悪いですが)自己満足の世界ですから、当人が納得でき、楽しめればそれで良い訳です。

 けれども、数字は万人にとって分かりやすい基準であるとともに、音の「大部分」を語っているはずです。本当に良い音を追求しようと思えば、木を見る前にまず森を見ねばなりません。ヘッドホンの場合、一番音質に効くところは、ケーブルとかプラグではなく、音を出すことに直接関係している部品の構造・構成でしょう。この視点から見て、ER-4Sはとても合理的な製品です。ER-4Sには、ER社の音のプロフェッショナルとしての威信にかけて「とことん物理量で攻めてやろう」という根性が詰まっているように思います。特に周波数特性に関しては、「イヤホンそのものの周波数特性ではなく、鼓膜が受け取る音の特性を考える」という、普通のヘッドホンメーカよりも一歩踏み出した、画期的な答えを導き出しています。このような科学的な方法を取ってはじめて、劇的な音質向上が望めると言えそうです。音をいたずらに神秘的なものにせず、客観的なものとして捕らえるER社の方針に、作者は大いに感動しています。

 


姉妹機ER-4B

 ER-4Sには姉妹機としてER-4Bがあります。
 ER-4Bは、バイノーラル録音を聴くために特に用意されているモデルで、イヤホンの鼓膜の位置での周波数特性が、diffuse-fieldと呼ばれる音場でリスナーが聞く音の鼓膜の位置での周波数特性と一致するようにEQ(diffuse-field equalization)が調整されています。特に、KEMAR(Knowles Electronics Manikin for Acoustic Research ->写真、耳道部分にはZwislockiカプラが使われる)という音響実験用のダミーヘッドなどで録音されたソースを聞のに最適化されているようです。

 もともと、ER-4シリーズは、ER社のER-1というチューブ伝送式のイヤホンを基準にして作られていて、ER-4BはER-1とほぼ同じような周波数特性になっています。ER-4Sは、基本的にはER-4Bと同じ周波数特性を持っていますが、ER-4Bに比べて、高域(10KHz)がおよそ5dB減衰したレスポンスを持っています。

 さまざまな実験結果によると、周波数特性がフラットなスピーカを音響が良好なリスニングルームに設置する場合、実際に人間が聴く音は高音(10KHz)が4-10dBほど減衰した音になります。そのため、市販のステレオ録音では、マイクロホンの選択や電子的なEQ操作を行うことによって、スピーカで聴いたときの音が高域不足にならないように製作されています。このような録音をER-4Bのようなフラットな特性を持つヘッドホンで聴くと、室内音響による高域の減衰がないため、高域の勝った音になってしまうのです。これが、ER-4Sのレスポンスが高域で5dB減衰している理由です。

 しかし、海外の掲示板を覗いて見ると、必ずしもER-4Sがステレオ録音にベストと言うわけでもないようです。人間の聴覚にはかなり個人差があり、人によってはER-4Bの方が、ステレオ録音でもより良い結果が得られると主張する人がいます。実は、作者もその一人で、ER-4SとER-4Bでは、ER-4Bの方が音が新鮮で、ゼンハイザーのHD600にも似た音であると感じています。

 ER-4シリーズはER-4Sが標準モデルとなっていますので、最初はこちらを買うのが安全でしょう。しかし、ER-4BのER-4シリーズの全体の売上に対する率はわずか2%で、実際に両方とも入手して確かめた人は少ないようです。2種とも持っている人には、ER-4Bの方を好むケースが案外多いようです(気に入ったから買うのだろうけれども)。

姉妹機ER-4P

 ER-4PはER-4Sをポータブルオーディオプレーヤでも使いやすいように、低インピーダンス化したものです。

 インピーダンスは27Ω(at 1KHz)で、出力電圧の低いポータブル機器でも電力を取り出しやすいため、大音量を達成できるようになっています。また、中域以降がだんだんと減衰していくような周波数特性にすることで、見かけ上低域が増えて聞こえるように「味付け」されています。注意していただきたいのは、「低音が増えた」というのは見かけ上のことであって、発音体の設計はER-4Sと同じ(ER-4Bも同じ)ということです。これらの特性の違いは、すべてコード中央のパイプに収まっているEQ回路の違いによります。

 また、ポータブルユースでは動き回ることが多いことに配慮し、柔らかいゴムで被覆したコードを採用することでタッチノイズを低減させています。

 反面、正確さ、とりわけ高音のシャープさ、クリアさではER-4Sに一歩譲っているようで、ヘッドホンジャックの質さえ良ければ、ER-4Sの方が有利なようです。ER-4Pは、試作段階でボツになったモデルを改良復活したものとも言われています。

 ポータブルオーディオ機器ではER-4Sは使えないかというと、ぜんぜんそんなことはありません。実は、一般的なポータブル機器の5mW程度の出力(負荷16Ω時)があれば、十分すぎるほどの音量を取り出すことができます。作者としては、どんな用途でもオールマイティに使えるER-4Sのほうをおすすめしておきます。

 ER-4SとER-4Pの比較検討については、こちらで詳しく行っております。

 

●廉価モデルER-6
 ER-4の廉価版で、よりコンシューマ志向で使いやすさとローコストを主眼にした新製品。ER-4を放逐する製品ではなく、音質ではER-4の方が上と言われています。コードはポータブルユースに配慮したもの。イーディオで取り扱いの予定がある(01/12/09時点)。

 

●どこで購入する?

 ここまで来て、中には「使ってみたい」と思っている方もいらっしゃると思います。ではどこで買えばよいのか。
 日本での取り扱い店は現在のところイーディオの1店のみです(2000年6月より販売開始)。イーディオさんは通信販売を行っていますので、国内ならどこからでもインターネットを通じて通信販売ができます。 ついこの間までは国内での取り扱いはなかったので、これは大きな前進。英語が分からない方でも気軽に注文できるようになりました。


 また、アメリカのヘッドホン販売専門業者であるHeadRoomでは、海外からのオーダーも受け付けているようです。VisaかMasterCardがあると便利でしょう。

 イーディオよりもHeadRoomで買ったほうが安いのですが、HeadRoomはどうも品質管理があやふやなようで、しばしば誤送・不良品などの報告が聞かれます。トラブルが発生すると、商品の送り返し等が面倒なので、国内で買われることをおすすめしておきます。

●付記ータッチノイズ軽減法touchnoise_tip.gif (22341 バイト)
 上にも書いたように、ER-4Sはコードが着ているものに擦れたりするごとに、耳元でガサゴソと音が聞こえる、いわゆるタッチノイズを発生するのが欠点です。
 このタッチノイズを減少させるtipとして、耳の周りにコードを巻きつけ、耳にインシュレータの働きをさせるということが有効であると言われています。
 また、眼鏡を着用している方ならば、眼鏡のツルの部分にコードを2,3回巻きつけるようにすると、さらに劇的な効果があります。
 この方法は、ミュージシャン用のイヤホン、ProPhonicsシリーズで積極的に利用されています。


Etymotic Research ER-4Sスペック

周波数特性

20Hz - 16KHz +/-4dB;   50Hz - 10KHz +/-2dB (*)

型式

ダイナミック型

極性

+電気入力 = +音響出力

インピーダンス

100Ω

最大出力音圧

122dB(115dB)(**)
感度 at 1KHz 108dB SPL(1.0Vrms) / 98dB SPL(1.0mW)
最大許容入力 3.0Vrms(連続)
重量 28g以下(1オンス)
コード長/端末 4フィート/ステレオミニプラグ
価格 $330(米国リストプライス)
\37,000(イーディオ、税抜き、送料別)(***)

(*)ER-4Sの周波数特性は人間の聴覚に合わせた特殊なものです。詳しくは、ER社のサイトで確認してください。
  測定はKnowles Electronics社開発のZwislockiカプラを使用しており、これは人間の耳の特性を良く再現するものとのことです。
(**)括弧内は旧マニュアル記載のもの
(***)イーディオにおける価格は変動する可能性があります。イーディオのHPでお確かめ下さい。

 

Etymotic Research ER-4 "MicroPro" (TM) Earphones Line Up:
用途別に選べるラインアップ


  ER-4B (BINAURAL) For KEMAR manikin and other binaural recordings

 KEMAR (Knowles Electronics Manikin for Acoustic Research)ダミーヘッドを基にDiffuse Field Frequency Responseを再現。KEMARなどのダミーヘッドで録音されたバイノーラル録音を聴くために使用する。

 ステレオ録音に使用すると、新鮮な高域がたっぷりと楽しめる。ER-4Sに比べると、SENNHEISERの最高級ヘッドホンHD600に似たキャラクターかもしれない。

  ER-4S (STEREO) For normal pre-recorded material

 基本的にはER-4Bと同じレスポンスを持つが、ステレオ録音でオーバーブライトにならないように、高域(10KHz)が5dB減衰したレスポンスを持っている。3つの中では、もっともスタンダード的といえるかもしれない。ステレオ録音をモニターするための、信頼できるリファレンスとして。

  ER-4P (POWER) Higher sensitivity for use with portable devices

 ER-4Sの低インピーダンス版。ポータブルユニットでの使用に最適。ケーブルのタッチノイズも柔らかいゴムで被覆することにより低減させている。

FEATURE COMPARISON

  ER-4B ER-4S ER-4P
Lightweight and portable
High accuracy
Noise isolation (20-25dB)
Flat diffuse-field equalized response    
For specialized binaural recordings    
Highest fidelity on standard commercial recordings    
Higher sensitivity    
Enhanced bass response    

case_s.jpg (14440 バイト)         case2_s.jpg (13922 バイト)

Related Links:
Etymotic ER-4S --- HeadRoom Product Area
 ヘッドホンと自社オリジナルのヘッドホンアンプの販売を専門とするヘッドルーム社のER-4S紹介ページ。周波数レスポンス、パルスレスポンス、位相特性の3つのグラフが掲載されています。普通のヘッドホンのなかでは周波数特性が滑らかだと言われているSennheiser HD600などに比べても、いかにER-4Sのほうが数段正確であることが分かります。

Etymotic Research ホーム
 Etymotic Researchのウェブサイト。

イーディオ
 ついに出た、現時点では国内唯一のER-4正式ディーラー。

kenさんのER-4S/P紹介ページ(日本語)

0.1tさんのヘッドホン試聴期(含ER-4S/日本語)

Preventing Hearing Damage When Listening With Headphones (A HeadWize Headphone Guide)
 非営利ヘッドホン総合ページ、HeadWizeのガイド。ヘッドホンでの安全音量について述べています。

ER-4S Review at audioreview.com
 殆どの人が満点(5点)か、あるいは4点をつけていると言うのは、やはりスゴイ事だと思う。平均点はなんと4.89/5である(00/02現在)。

SoundStage! Fringeの記事(August/2000)
 ER-4Sのカスタム・イヤモールドの記事。


株式会社リオン
 国内の補聴器メーカ。山崎氏のホームページによると、同社の補聴器用の耳せんが、ER-4Sのイヤチップ代わりとして利用できるという。
 国内だから入手もそれほど難しくないと思われるし、サイズも豊富なので、耳に不快感を覚える人、良好な音質・遮音が得られない人は試してみるといいかも。
 
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