SONY Portable CD Player
D-E01



D-E999メモ:
 先日D-E999を借りてしばらく使わせてもらう機会を得たので、カタログからは分かりにくいことを、ごく簡単にメモしておきます。

・重さと質感
 軽い。D-E01に比べると、とても軽い。
 しかし、ひんやりとした金属の感触はなく、高級感はあまりない。
・リモコン
 スティック型の「ひねる」タイプのリモコンは、D-E01のものよりも確実に操作性がアップしている。CD-Textにも対応。
・付属イヤホン
 従来付属していたMDR-E838ではなく、MDR-E805というイヤホンが付属しています。このイヤホンはMDR-E838よりも多く低音が出るようにできていて、イヤパッド無しでも十分な低音がえられるようになっています。同時に、コストダウンのためか、構造が簡単化されています。
・G-Protectionは完璧。しかし・・・
 G-Protectionのおかげで、音飛びは殆どおこらないはず・・・なのですが、思わぬ落とし穴があります。極度の小型化のために、内装がCDの厚みぎりぎりにできていて、満員電車等で本体が押しつぶされ、たわむと、内装がディスクに当たって、ディスクの回転が止まってしまうようです。D-E01でも極端な状況では同じ事が起きますが、D-E01よりも回転が止まりやすい。
・音質
 D-E01と同じかそれ以下です。
 音に伸びがなく、圧縮された感じです。そして何より、高域が出ません。 普通のイヤホンを使っている分には差が分かりにくいものですが、大型ヘッドホンやER-4でチェックして見ると、かなりの高域落ちに気づきます。ひずんだ音、嫌な音の類は出ないので、これはこれでまろやかで落ち着いた音として評価できなくはありませんが、こういう音を原音に忠実な音だとは考えない方が良さそうです。幸い、ラインアウトの音質はしっかりしているようで、ポータビリティの低下を覚悟でここに外付けのヘッドホンアンプを挿入してやると、見違えるようになります。
 それにつけても最近のポータブルオーディオの小型省電力一点張りの商品展開にはガックリさせられます。
・ノイズ
 少ないです。皆無ではありませんが、D-E01のような耳障り系は出ません。

 

* * * * *

 

 ER-4の送り出し機として、とりあえずヘッドホンアンプなしで、あまり大袈裟にせずに使えるPortaCDPはないものかということで、D-E01を買ってしまいました。
 ここでは、その音質・使い心地を簡単にレビューします。音質的には不満な点も残りますが、まずまずの製品ではないかと思います。

 世のポータブルオーディオマニアの方の間では、ディスクリート構成でマニア心をくすぐるCECのポータブル機や、レガートリンク系でCDRWが掛けられDVDまで見られるPioneer PDV-10が人気ですが、いずれもポータビリティの点からはイマイチといわざるを得ません。その点、D-E01は音質上は多分に見劣りするところがあるものの、やはり本家本元のポータブルCDプレーヤとしてのバランスの良さが在るように思われます。

 購入の決め手となったのは、主に以下のようなポイントです:

 と言うわけで、ビックカメラにて3万円強で購入しました。


<簡単なレビュー>


音質

 まず、ゼネラルオーディオとしては全く申し分なき音質である事を先に断っておきます。オーディオマニア好みのするようなハイエンドの録音を再生しても、あからさまに歪みが出る、と言うことはありません。

 しかし、ER-4は大変解像度の高いイヤホンで、その性能を9割まで引き出す事は簡単ですが、残りの1割を引き出せるかどうかについては、やはりヘッドホンアンプの性能が効いてきます。
 D-E01も省電力設計であることも災いしてか、より微妙な音質の部分では色々と問題を抱えています。やはり低音の安定感と、高域の解像度に不満が出てきます。ポータブル独特の、いじけていて、堅く、元気のない・ダイナミクスに欠ける音も気になります。単体ヘッドホンアンプの音と比べると、低音はかなりこそぎ取られている感じですし、家で聞いたときは「背筋がゾクッとする」感じがした鋭い高音も、このCDプレーヤではぼやけて聞こえます。

 テストCDの超低域を大音量で鳴らすと、量的に乏しく、またノイズで変調されたような粉っぽい音がします。。高域も、ちゃんとしたヘッドホンジャックに比べると解像力がなく、2次元的な音になってしまいます。省電力設計のためか全体的に余裕がなく、ピークの伸びがないというか、音が圧縮されていると言うか、ダイナミクスを欠いた音であるように感じます。

 幸いなことにLine Outの音質はなかなか良好で、携帯用ヘッドホンアンプと組み合わせれば、据え置き型CDプレーヤのヘッドホンジャックを越えるくらいの音質は出せるようです。とはいってもポータビリティを犠牲にして携帯用ヘッドホンアンプを持ち歩くには覚悟が要ります。もっと手軽に高音質を楽しめる商品はないものでしょうか。

ノイズ

 ノイズについては基本的には全くないのですが、何故か右チャネルだけに、高周波のノイズが乗ります。このノイズは非常に小さなものなので、遮音性のあるER-4でなければ気が付かないかもしれません。ポップスやロックでは全く気付きませんが、静かなクラシック音楽を聴いていると耳につく可能性があります。

 また、時々音楽の静かな部分で、「キュルキュル」という、駆動系が原因と思われるノイズが出ます。

 以上の2点について、最初は、「不良品だろうか?」と思い、私物の他に2台のD-E01を試聴したのですが、その2機とも同じ問題を抱えていました。これについて、ソニーに問い合わせをしたところ、以下のような返答をもらいました。

「このノイズにつきまして 残念ながら D-E01及びこのシリーズのプレーヤーに出て居り恐縮ながら性能範囲とさせて頂いて居ります。セットを調整し ある程度ノイズを軽減することは可能ですがそれでよろしければサービスステーション(SS)を通じ担当部門で行います。」

 ゼネラルオーディオだし、些細なノイズまで追及するのはSSさんの迷惑になるかとも思ったのですが、右チャネルだけから出ているのがひっかかり、SSに出すことにしました。コンデンサ(パスコン?)を幾つか交換してくれたようです。これにより、私のD-E01において以上2つの問題はかなり軽減されましたが、完全には消え去りませんでした(今でも少し聞こえます)。

一般的な「シャー音」はまったくありません。基本的なS/Nは良好です。それだけにこの問題は残念です。
この様な「刺激系」のノイズはオーディオマニアが最も嫌うタイプのノイズです。\38,000といういまどき珍しい(ソニーしかできない)高額をつけている以上、もう少し詰めてから製品化してもらいたかったものです。

このノイズは、ボリュームを完全に絞っていても出続けるので、確認はし易いと思います。ACアダプタ使用時にはモータは定速回転しているようで、「キュルキュル」の方は出ません。

使い心地

 内蔵電池で20時間、外付け電池と併用で62時間の連続使用ができることになっています。少々長い旅行をするときには心強いのですが、少々オーバースペックだと思いませんか。毎日2時間聴いても、1ヶ月持つわけですが、何も電池が手に入らないような僻地を冒険するわけではないのですから…。
 (我々の立場としては)何よりも優先して欲しいのは、音質なのです。行き過ぎたロングバッテリライフ競争の弊害ですね。

 非圧縮の音飛びガード(「G-Protection」)は優れたもので、今まで一度も音飛びに出会ったことはありません。これは、ソニーの技術力の賜物と言ってよいでしょう。

 しかし、使いやすく洗練されているかどうかと言う点ではやや疑問が残ります。
 目玉の一つである「スロットイン」は、カタログにある「片手で」というのはまず無理で、両手でディスクチェンジする事になります。ディスクチェンジに掛かる時間も普通のトップオープンのプレーヤに比べて長く掛かり、必要性については疑問が残ります。複雑なローディング機構は故障も多いようです。

 電池の充電も、手動でCHG(チャージ)ボタンを押さなければ開始されない上、再生と充電は同時にできないようになっていて、不便さを感じます。松下の製品はこの様な事ができる様になっています。

 おまけにリモコンの操作性も最悪で、使いつづけて1ヶ月以上たっても手元を見なければ正確に操作ができない有様です。ボタンも突出した部分が多く、常時ホールドポジションに戻さなくてはなりません。同じソニーでもスティックリモコンの方がずっと使いやすい。単買されているものの中で互換性のあるリモコンがあれば、差し替えて使うのもよいかもしれませんね。細かい事になりますがリモコンのクリップのばねは弱く、冬着では十分な圧着力が得られずにすぐに外れてしまいます。仕方がないので、私はワニ口クリップを分解したバネ&金具に取り替えています(交換にはかなり骨が折れました)。これならば十分な圧着力が得られ、冬着でも簡単には外れません。

 付属のキャリングケースは、標準状態では本体を収納したままディスクチェンジをすることができません。これは各所で不評のようです。これでは何のためのスロットインなのか分からなくなります(下の写真を参照)。

このように、細かなな部分に対する配慮が欠けているのは残念な事です。実使用上の使用感というのは、単にハイ・テクノロジーを投入すれば向上するものではないと思います。単なる技術力のデモンストレーション、あるいは「こんな事ができたらいいな」という観念的レベルに終わってしまっている部分と言えます。ソニーの悪い癖です。

 開発者は、自分たちが作った製品を使った事がないのではないか。最近の家電はそういう疑念を起こさせる製品であふれています。

 

 以上、かなり辛辣になってしまいましたが、初めにも書いたとおりゼネラルオーディオとしては全く申し分なき音質です。また、使い心地も、基本的には良好です。私が今まで使用してきたパナソニックのCDプレーヤはピアノを演奏するとそれだけで音が割れる有様でした。私個人としてはそこそこ満足しています。
 最終的には、やはり値段が\38,000と高い点がネックになるでしょう。
 別に最上位モデルでなくてよいと言う方には、似通った性能でトップオープン型のE999が、実売価格2万円弱で販売されています。ローディング機構がないためD-E01に比べ100g程軽いなど、見逃せない魅力もあります。

クリックすると写真は大きくなります。
少々重いです(RICOH RDC-5000/DC-4で撮影)。

D-E01_s.jpg.jpg (20660 バイト)

業界初のスロットインメカニズム&ディスクシェイプデザイン
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このレバーをスライドするとディスクが飛び出す
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CD TEXT対応リモコン。家の中でCD TEXT情報の入ったCDはホロヴィッツのショパンアルバムしかなかった
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このバッテリだけで20時間再生可能
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D-E990の樹脂製に比べると高級感のある新型外付けバッテリケース
D-E01_battery_case_s.jpg (14972 バイト)

キャリング・ケース。ポケットには7〜8枚のCDを収納可能
D-E01_defaultuse_s.jpg (31528 バイト)

残念な事に、標準状態では、収納したままのディスクチェンジはできない。これは各所で不評のようだ
D-E01_carry_case_imp_s.jpg (25615 バイト)

そこで、写真のように改造。イジェクトレバを出す穴をあけ、裁縫用のバイアステープで補強する。なかなか使い心地がよい。この状態でもリモコンや外付けバッテリが利用できる。オーナーの方は是非お試しあれ

<おまけ>
 Etymoticオーナーの方々とメールでお話をするとき、よくポータブル機の話題が出てきます。先日も「理想のポータブル機は・・・」なる話題が出ました。それらの内容をまとめると、こんな感じです。


 現在のところ、この理想に近いのは、Pioneer PDV-10かもしれません。これはポータブルDVDプレーヤですが、CDもかけることができます。下手に省電力にしていないお蔭でヘッドホンジャックの質が良く、AirHeadに勝るとも劣らないとの事。また、96kHz/24bit DACの解像度は桁が違うそうです。レガートリンクコンバージョンのお蔭で、既存の資産を十二分に生かすことができます。ただ、バッテリ等の問題からまだまだポータブルとして使うには大きすぎるので、何とかして性能を保ちつつ小型化を進めてもらいたいものです。
 頭外定位に関しては、DolbyHeadphoneの低消費電力のICが用意されているようなので、そちらが期待できそうです。すでにシャープのST-880MDプレーヤには搭載されています。

Related Link:

ソニー広報発表文D-E01

 


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